掌の中の

自宅を出ようと管理棟前を通ると、警備員さんと一人のお母さん、小さな子供さんが頭を寄せ集めていた。
どれどれ?
よく見ると、お母さんと子供の手に、小さなメジロが。 「手乗りらしいんですよ、おとなしくて逃げないの」・・・飼われていた鳥なのかな?
小学生の頃は、十姉妹が必ず家にいた。 子供は残酷なものだから、嫌がる鳥をカゴの中で追い掛け回し、よく手につかまえたものだった。 掌の中に感じる小さな命の温かみ。 気の強い子は私の手を噛んでよく飛び去ったし、逆に怖さに固まってしまいなすがまま、な子もいたっけ。

掌の中に、暖かく頼りない大切なものが確かにあるように感じられることがある。 それは、本当に確かなもののこともあるし、そんな気がした、だけの幻なこともある。 小さくて暖かなものは、繊細で壊れやすくて、常に束縛できなくて。

どうか、飛び去ることがありませんように。